日中は汗ばむほどの陽気となり、初夏の風が心地よい季節となりましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
まえだ小児科医院の院長、前田です。
本日は、当院に通うお子様たちだけでなく、お父さんやお母さん、つまり「大人」の皆さまにも強く警戒していただきたい、重要なお知らせとお願いがあります。
船橋市からの公式発表:東西線を利用された方はご注意を
先日、当院のある市川市のお隣、船橋市から感染症に関する正式な報道発表がありました。
発表内容によると、5月5日~5月6日にかけて船橋市在住の20代女性が「麻疹(はしか)」を発症されたとのことです。ここで私たちが特に注意すべき点は、この女性が発症前後に、当院の最寄りでもある「東京メトロ東西線」、そして市内でも利用者が多いと思われる「半蔵門線」を利用されていたということです。
通勤や通学、ゴールデンウィーク最終日のお出かけなどで、5月6日前後に東西線、または半蔵門線をご利用になった方、あるいは沿線の施設に立ち寄られた方は、ご自身やお子様の体調の変化を少し注意深く観察していただく必要があります。
■参考
船橋市の公式発表はこちら
「はしか=子どもの病気」という誤解。大人の感染が危険な理由
「はしか」と聞くと、小さな子どもがかかる病気というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、今回感染されたのが20代の女性であることからも分かるように、決して子どもだけの病気ではありません。むしろ近年は、免疫を持たない大人の間で感染が広がるケースが目立っているのです。
マスクでは防げない「空気感染」の脅威
麻疹の最大の特徴は、その**「極めて強い感染力」**にあります。インフルエンザや新型コロナウイルスのように飛沫や接触でうつるだけでなく、麻疹はウイルスが空気中を漂う「空気感染」を起こします。
つまり、手洗いや一般的なマスク着用だけでは完全に防ぐことができず、免疫を持たない人が感染者と同じ空間(例えば同じ電車の車両や、駅のコンコース、病院の待合室など)にいるだけで、ほぼ100%の確率で感染してしまうと言われている恐ろしいウイルスなのです。
麻疹の主な症状と、大人の重症化リスク
感染した場合、約10日〜12日間の潜伏期間を経て、次のような症状が現れます。
- 初期症状(カタル期):38度前後の発熱、激しい咳、鼻水、目の充血や目やになど、重い風邪と非常によく似た症状が数日続きます。実は、この時期が最も周りにウイルスを撒き散らしやすい危険な期間です。
- コプリック斑:熱が少し下がったかと思うと、口の中の頬の裏側に、白い小さな斑点(コプリック斑)が現れます。
- 発疹期:再び39度以上の高熱が出るとともに、耳の後ろや首まわりから赤い発疹が出始め、数日かけて全身に広がっていきます。
ここで強調しておきたいのは、**大人が麻疹にかかると、子ども以上に重症化しやすい**という事実です。高熱が長く続き、体力が奪われるだけでなく、肺炎や中耳炎、さらには脳炎といった命に関わる重篤な合併症を引き起こす危険性も高まります。「ただの風邪だろう」「少し休めば治るだろう」という自己判断は非常に危険なのです。
最大の予防策は「ワクチン」。お子様だけでなく親御さんご自身の確認を
感染力が強く、重症化のリスクもある恐ろしい麻疹ですが、確実に防ぐ方法があります。それが「麻疹風疹混合(MR)ワクチン」の接種です。
お子様の母子健康手帳を今すぐチェック!
現在、日本ではお子様が1歳になった時と、小学校入学前の1年間(年長さんの時期)の「合計2回」、定期接種として無料でワクチンを受けることができます。2回接種することで、99%以上の確率でしっかりとした免疫をつけることができます。
親御さんにお願いです。ぜひ今夜、ご家庭にあるお子様の「母子健康手帳」を開き、MRワクチンの欄にきちんと「2回分」の接種済みのハンコが押されているか確認してください。
大人にもある「ワクチンの落とし穴(空白世代)」
そして、もう一つ重要なのが大人自身の免疫です。日本のワクチン制度の変遷により、「麻疹ワクチンの接種が1回だけだった世代」や「1回も受けていない世代」が存在します。また、子どもの頃に1回だけ打っていても、大人になるにつれて免疫が徐々に低下してしまっているケースも少なくありません。
お父さん、お母さんが通勤電車などで感染し、家庭にウイルスを持ち込んでしまうのが最も恐ろしいパターンです。ご自身のワクチン接種歴が不明な場合や不安な方は、大人向けの抗体検査やワクチンの任意接種を実施している医療機関に相談し、ご自身の身も守る行動をとることを強くお勧めします。
【重要】「もしかして…」と思ったら?絶対に守ってほしい受診ルール
最後に、地域の医療を守るための、一番大切なお願いです。
もし、東西線を利用した後に「熱が出て、咳や鼻水が止まらない」「体に発疹が出てきた」など、ご家族に麻疹が疑われる症状が出た場合、絶対に直接クリニックの受付に来ないでください。
先ほどお話しした通り、麻疹は空気感染します。疑わしい状態のまま待合室に入ってしまうと、まだワクチンを打てない0歳の赤ちゃんや、妊娠中の妊婦さんなどに感染を広げてしまう極めて重大な危険があります。
「もしかしてはしかかも?」と思ったら、まずは必ず、ご来院前にまえだ小児科医院までお電話(〇〇〇-〇〇〇-〇〇〇〇)をお願いいたします。
お電話にて症状や行動歴(東西線に乗ったかなど)を詳しくお伺いし、他の患者様と接触しないための特別な診察室や、専用の診察時間を個別にご案内させていただきます。
おわりに:家族みんなで正しい知識を持ち、感染を防ぎましょう
近隣での感染者のニュース、しかも身近な路線での発生となると、どうしても不安になってしまいますよね。しかし、過剰にパニックになる必要はありません。
ワクチンの履歴を家族全員でしっかり確認すること、そして疑わしい時は「まず電話で相談する」というルールを徹底することで、お子様やご家族、そして地域の小さな命を守ることができます。
お子様のワクチン接種状況でわからないことがあれば、いつでも当院にお気軽にご相談ください。大人も子どもも関係なく、地域全体で正しい知識を持ち、一緒にこの状況を乗り切っていきましょう。
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