こんにちは!まえだ小児科医院の院長の前田です。
今回は、新しく始まる「RSウイルス」のワクチンについて、小児科医の視点からお話しさせてくださいね。令和8年度(2026年4月1日)から、お腹に赤ちゃんがいる妊婦さんを対象として、RSウイルスの母子免疫ワクチンが定期接種として始まります 。
RSウイルスってどんな病気?なぜ怖いの?
「RSウイルス」という名前を、子育て中のご友人から聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。これは、小さなお子さんや高齢の方に呼吸器の症状を引き起こす、とても身近なウイルスです 。驚かれるかもしれませんが、2歳になるまでにほぼ全ての赤ちゃんが、少なくとも1度は感染すると言われているくらい、一般的なウイルスなんです 。
感染すると、お熱が出たり、鼻水が出たり、咳が出たりといった、いわゆる風邪のような症状が出現します 。初めて感染した赤ちゃんの約7割は、軽い症状のまま数日のうちに自然と良くなっていきます 。でも、安心ばかりはしていられません。残りの約3割の赤ちゃんは、咳がどんどん悪化してしまい、重症化してしまうことがあるのです 。小さな赤ちゃんが息苦しそうにしている姿を見るのは、ご家族にとっても本当に辛いものです。
お母さんから赤ちゃんへの最初のプレゼント「母子免疫」
今回新しく接種できるようになるのは、ファイザー社のアブリスボというワクチンです 。このワクチンの一番素晴らしいところは、「お母さんが打つことで、赤ちゃんを守れる」という点です。妊婦さんがこのワクチンを接種すると、お母さんの体の中でRSウイルスと戦う「抗体」が作られます 。その抗体が、へその緒(胎盤)を通してお腹の赤ちゃんへとしっかりと移行し、生まれたばかりの赤ちゃんをRSウイルスから守るバリアになってくれるのです 。
対象となる方と、接種のスケジュール
定期接種(公費)として受けられる対象の方は、以下の通りです 。
- ワクチンを接種する時点で、妊娠28週0日から36週6日までの妊婦さん
- これまでの妊娠の時に、すでにRSウイルスワクチン(母子免疫ワクチン)を接種したことがある方も対象になります
この期間の間に、1回接種を行います 。接種はご自身の住民票がある市町村で実施されます 。里帰り出産などを予定していて、お住まいの市町村以外で打ちたいなという場合も、まずはご自身の住民票がある市町村へお問い合わせくださいね 。
ワクチンの効果と、知っておきたい副反応
しっかりとした予防効果
このワクチンは、赤ちゃんが重い肺炎などになるのを防ぐ頼もしい効果が確認されています 。
- 医療機関の受診が必要になるような「重症の下気道感染症(肺炎や気管支炎など)」を、赤ちゃんが生まれてから90日までで約8割、180日までで約7割も防いでくれます
- 重症ではない下気道感染症であっても、生まれてから90日までで約6割、180日までで約5割の予防効果があります
気になる副反応について
お腹に赤ちゃんがいる時の注射は心配になるかと思いますが、他のワクチンと同じように、いくつかの副反応がみられることがあります 。主なものとしては以下が挙げられます 。
- 注射をした場所の痛み、腫れ、赤み
- 頭痛や筋肉痛
また、妊娠高血圧症候群のリスクについてですが、お薬が承認される際に行われた臨床試験では、発症リスクが増加することはありませんでした 。海外の一部ではリスクが増えたという報告もあるものの、これについては解釈に注意が必要だとされています 。もし接種した後に「なんだかいつもと違うな」と気になる症状が出た場合は、遠慮せずにすぐ接種した医療機関に相談してください 。なお、お医者さんが特に必要だと認めた場合は、他のワクチンと一緒に接種することも可能です 。
万が一のときの救済制度について
予防接種は感染症を防ぐためにとても大切なものですが、極めてまれに、健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が起こることがあります 。完全にゼロにすることは難しいため、もしもの時のために救済制度がしっかりと設けられています 。この制度は、接種を受けたお母さんご本人と、生まれてきた赤ちゃんの両方が対象となります 。制度の利用をご希望される場合は、予防接種を受けた時に住民票があった市町村にご相談ください 。
生まれてくる大切な赤ちゃんの小さな命を守るために、ぜひかかりつけの産婦人科の先生とよくご相談いただき、接種をご検討くださいね。
詳しくは下記のPDFをご覧ください。
コメント