赤ちゃんが顔をこすりつける理由
――小児科医からお父さん・お母さんへ――
赤ちゃんがママやパパの胸元や布団、ぬいぐるみに顔をこすりつける仕草。とても愛らしい姿ですが、「かゆいのかな?」「肌のトラブル?」と心配になる方も多いのではないでしょうか。今回は、小児科医の立場から、赤ちゃんが顔をこすりつける主な理由と、気をつけたいサインについてお話しします。
🍼1.安心を求める「スキンシップ」のサイン
まず最も多いのが、“安心したい”という気持ちからくる行動です。赤ちゃんはまだ言葉で気持ちを伝えられないため、肌で感じるぬくもりや匂いによって安心を得ようとします。お母さんやお父さんの胸に顔をすり寄せるのは、「抱っこしてほしい」「眠たい」「甘えたい」というサインです。この場合、赤ちゃんの表情は穏やかで、ぐずりながらも満足そうに落ち着くことが多いでしょう。
🌙2.眠気や入眠儀式の一環
眠くなってくると、赤ちゃんは自分なりに「寝る準備」を始めます。その一つが、顔をこすりつける行動。眠気を感じたとき、布団や枕、保護者の腕に顔を押しつけるようにしてウトウトする姿はよく見られます。いわば、大人が「まぶたをこする」のと似たような行動で、特に夜やお昼寝前に頻繁に見られます。
🌼3.肌のかゆみや乾燥がある場合
一方で、注意したいのが「皮膚トラブル」によるものです。頬やあご、首周りなどを頻繁にこすりつけるときは、乳児湿疹(新生児ニキビ)、よだれかぶれ、アトピー性皮膚炎などが原因でかゆみを感じている可能性があります。
特に以下のようなサインがある場合は要注意です。
・赤みや粉を吹いたようなカサカサがある
・かさぶたや滲出液が出ている
・眠れないほど顔をこすりつける
・首や耳の後ろにも湿疹が広がっている
このようなときは、保湿だけで様子を見るよりも、早めに小児科や皮膚科を受診して原因を確かめることが大切です。
🍃4.アレルギーや鼻づまりの可能性も
実は、顔をこすりつける行動の中には「かゆみ」以外の理由が隠れていることもあります。たとえば、鼻づまりで息苦しいときや、アレルギー性鼻炎の初期症状がある場合。赤ちゃんは鼻をこすったり、顔を押しつけたりして不快感を和らげようとします。
ミルクや離乳食のあとに頻繁に見られる場合や、夜間に呼吸が苦しそうな様子があれば、ぜひ当院へご来院ください。
☀️5.成長過程の「感覚あそび」
生後4〜6か月頃からは、自分の手や足、顔などに興味を持ち始めます。この時期の顔こすりは「触覚の発達」の一環でもあり、“これは自分の顔なんだ”という感覚を確かめているのです。
柔らかいタオルやお母さんの服の質感が心地よく、思わずこすりつけていることもあります。このような場合は心配いりません。安全な環境で見守ってあげましょう。
💡6.こんなときは受診をおすすめします
「顔をこすりつける」のが一時的なものであれば、心配のいらないことがほとんどです。しかし、以下のような場合は小児科にご相談ください。
・皮膚の赤みやただれが続く
・かゆみで眠れない、機嫌が悪い
・鼻づまりや咳が続く
・体全体に湿疹が広がっている
赤ちゃんの肌は大人よりもずっとデリケートです。原因を早めに見極め、適切にケアしてあげることで、快適に過ごすことができます。
👩⚕️おわりに:気になるときは遠慮なくご相談ください
赤ちゃんの行動には、ひとつひとつ意味があります。「顔をこすりつける」仕草も、その多くは安心や成長の証。けれど中には、肌トラブルや体調不良のサインが隠れていることもあります。
もし少しでも「おかしいな」「いつもと違うな」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。お父さん・お母さんの心配を解消し、赤ちゃんが笑顔で過ごせるよう、私たち小児科がサポートいたします。
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